公共企業体労働関係法

法律第二百五十七号(昭二三・一二・二〇)

目次

 第一章 総則(第一条―第三条)

 第二章 職員の組合(第四条―第七条)

 第三章 団体交渉及び交渉委員の指名(第八条―第十六条)

 第四章 争議行為(第十七条・第十八条)

 第五章 苦情及び紛争の調整並びに調停(第十九条―第二十五条)

 第六章 仲裁(第二十六条―第三十七条)

 第七章 雑則(第三十八条)

 附則

第一章 総則

 (目的及び関係者の義務)

第一条 この法律は、公共企業体の職員の労働条件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続とを確立することによつて、公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し、擁護することを目的とする。

2 国家の経済と国民の福祉に対する公共企業体の重要性にかんがみ、この法律で定める手続に関与する関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。

 (定義)

第二条 この法律において「公共企業体」とは、左に掲げるものをいう。

 一 日本国有鉄道

 二 日本専売公社

2 この法律において「職員」とは、常時公共企業体に勤務して一定の報酬を受ける者であつて、役員及び二箇月以内の期間を定めて雇用される者以外のものをいう。

 (適用範囲)

第三条 公共企業体の職員に関する労働組合(以下組合という。)並びに労働関係及びその調整については、この法律の定めるところにより、この法律に定のないものについては、労働組合法(昭和二十年法律第五十一号)(第十一条、第十二条及び第二十四条から第三十七条までの規定を除く。)の定めるところによる。

第二章 職員の組合

 (職員の団結権)

第四条 職員は、組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。但し、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取扱う者は、組合を結成し、又はこれに加入することができない。

2 前項但書に規定する者の範囲は、政令で定める。

3 公共企業体の職員でなければ、その公共企業体の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。

 (不平等取扱の禁止)

第五条 公共企業体は、組合員であること、又は組合のために正当な活動をしたことをもつて、職員として雇い入れず、又は不利益な取扱をなし、若しくは解雇してはならない。職員は、組合に加入しなかつたことをもつていかなる不利益な取扱も受けない。

2 公共企業体は、その職員が組合に加入しないこと、又は組合から脱退することを雇用条件としてはならない。

 (組合規約の必要記載事項)

第六条 組合は、その規約に、無記名投票による役員選挙及び組合員に会計報告をなさしめるための公正な外部の監査人による組合資金の定期的監査の規定を設けなければ、この法律に定める権利を受け、手続に参与することはできない。且つ、組合規約には、その組合員が適当な期間ごとに、会計報告を要求することができる旨を規定しなければならない。

 (専従職員)

第七条 公共企業体は、その定める一定数を限り、その職員が組合の役員としてもつぱら組合の事務に従事することを許可することができる。この場合においては、いかなる給与も支給してはならない。

第三章 団体交渉及び交渉委員の指名

 (団体交渉の範囲)

第八条 公共企業体の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。

2 第四条の規定により組合に加入できない者以外の職員に関する左に掲げる事項は、団体交渉の対象とし、これに関し労働協約を締結することを妨げない。

 一 賃金、労働時間及び労働条件

 二 就業規則

 三 時間外割増賃金

 四 休日及び休暇

 五 懲戒規則並びに昇職、降職、転職、免職、休停職及び先任権の基準に関する規則

 六 苦情処理機関

 七 安全

 八 労働協約の終期、更新及び延長

 (交渉委員)

第九条 団体交渉は、もつぱら、公共企業体を代表する交渉委員とその公共企業体の職員を代表する交渉委員とにより行う。

2 交渉委員の最大限の数及びその機能は、政令で定める。

 (団体交渉を行うに適当な単位の決定)

第十条 公共企業体とその職員又はその組合は、協議により団体交渉を行うに適当な単位(以下単位という。)を決定しなければならない。

2 公共企業体とその職員又はその組合は、毎年一月三十一日までに労働大臣に前項の単位を届け出なければならない。

 (職員を代表する交渉委員の選出)

第十一条 公共企業体の職員を代表する主たる組合は、その組合員以外の職員の代表者と協議して交渉委員を指名し、毎年二月二十五日までに労働大臣に届け出なければならない。交渉委員(交渉委員の辞任の場合の補欠者を含む。)は、公共企業体の交渉委員と交渉するために、公共企業体の総ての職員を代表する排他的代表者である。この代表者が選出され得なかつたときは、左の条項が適用されるものとする。

  組合と他の職員の代表者が交渉委員の指名に参加する適当な組合の代表者について意見が一致しないか又はその他の理由によつて、二月二十五日までに交渉委員を選出することができなかつたときは、労働大臣は、交渉委員がこの法律によつて定められる基準によつて選出されるために、三十日以内に必要な措置をしなければならない。この目的のために、労働大臣は、左のことを決定するものとする。

 一 職員のいかなる単位が団体交渉を行うに適当であるか。

 二 指定された単位の中でいかなる組合又は他の職員の代表者が交渉委員の最終的選出に参加すべきであるか。

 三 組合又は他の職員の代表者による交渉委員の最終的選出の投票手続。この投票手続には、投票に参加する組合又はその他の職員の集団の職種と数的勢力に適当な考慮が払われなければならない。

2 前項第一号の決定を行うときは、労働大臣は、単位の職員の集団がその職種、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件において利害を同一にするように考慮を払わなければならない。

3 第一項第二号の決定を行うときは、労働大臣は、特別の事情があると認めるときは、職員の多数の希望を確めるために、職員に無記名投票による選挙を命じ、これを管理することができる。この選挙における有権者の指定に関する事項、選挙日に関する適当な注意事項の決定、適当な投票所の選定、選挙監視者の任命、並びに迅速な、正確な、忠実な投票の計算の保障等選挙の管理に関する事項は、政令で定める。

 (異議の申立)

第十二条 公共企業体の職員又はその組合で前条の交渉委員の指名について異議のあるものは、その指名後五日以内に労働大臣に対し、異議の申立をすることができる。

2 前条の異議の申立及び解決の手続は、政令で定める。

 (公共企業体を代表する交渉委員の選出)

第十三条 公共企業体は、交渉委員(交渉委員辞任のときの後任者を含む。)を決定し、毎年二月二十五日までに労働大臣に通知しなければならない。

 (交渉委員の証明及びその任期)

第十四条 労働大臣は、関係者の請求があるときは、交渉委員であることの証明書を交付しなければならない。

2 交渉委員の任期は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。但し、補欠委員は、前任者の残任期間その職務を行う。

 (団体交渉の回数)

第十五条 公共企業体及び職員を代表する交渉委員の会合は、一方の請求があれば開くことができる。但し、その会合は、毎年少くとも一回賃金その他雇用の基礎的条件に関する事項を具体化した成文の労働協約を締結する目的をもつて開かなければならない。

 (資金の追加支出に対する国会の承認の要件)

第十六条 公共企業体の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。

2 前項の協定をしたときは、政府は、その締結後十日以内に、これを国会に付議して、その承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中のときは、国会召集後五日以内に付議しなければならない。国会による承認があつたときは、この協定は、それに記載された日附にさかのぼつて効力を発生するものとする。

第四章 争議行為

 (争議行為の禁止)

第十七条 職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

2 公共企業体は、作業所閉鎖をしてはならない。

 (第十七条に違反した職員の身分)

第十八条 前条の規定に違反する行為をした職員は、この法律によつて有する一切の権利を失い、且つ、解雇されるものとする。

第五章 苦情及び紛争の調整並びに調停

 (苦情処理共同調整会議)

第十九条 苦情処理共同調整会議は、公共企業体の代表者二名と職員の代表者二名とをもつて構成し、第十条又は第十一条に基いて指定された各単位ごとに設置する。苦情処理共同調整会議は、日常の作業条件から起る職員の苦情を適当に解決しなければならない。

2 苦情処理共同調整会議の権限及び運用の細目は、公共企業体と職員の交渉委員の間の交渉で定める。

 (調停委員会)

第二十条 日本国有鉄道とその職員との間の苦情及び紛争の調停は、国有鉄道調停委員会が、日本専売公社とその職員との間の苦情及び紛争の調停は、専売公社調停委員会が、行う。

2 国有鉄道調停委員会及び専売公社調停委員会は、それぞれ中央に置かれる委員会(以下中央調停委員会という。)と地方に置かれる委員会(以下地方調停委員会という。)とする。

3 地方調停委員会の名称、位置及び管轄区域は、中央調停委員会の勧告に基いて、政令で定める。

4 地方調停委員会は、その管轄区域内の事務を、中央調停委員会は、二区域以上に係る事務及び地方調停委員会が調停をなし得なかつた事案に係る事務をつかさどる。

5 中央調停委員会は、それぞれ地方調停委員会から報告を徴し、その事務処理に必要な指示をすることができる。

 (委員)

第二十一条 各調停委員会は、三名の委員によつて構成される。

2 前項の委員は、左の各号により選出された委員の候補者について、内閣総理大臣が委嘱する。

 一 公共企業体及び職員を代表する交渉委員は、それぞれ委員の候補者として推薦すべき者の名簿を作成し、相互にこれを交換する。

 二 公共企業体の交渉委員は、職員又はその組合から提出した名簿の中から委員の候補者一名を、職員の交渉委員は、公共企業体の提出した名簿の中から委員の候補者一名をそれぞれ選出する。

 三 前号の規定により選出された二名の委員の候補者は、協議して第三の委員の候補者を選出する。

 四 前二号の委員の候補者の決定に当つては、各々一名の補欠候補者をあわせ選出しなければならない。

 五 公共企業体及び職員の交渉委員は、前四号により選出された委員の候補者及び補欠候補者の名簿を毎年三月二十五日までに内閣総理大臣に提出しなければならない。

3 調停委員会の委員の任期は、一年とする。但し、再任を妨げない。

4 調停委員会の委員は、旅費その他職務の遂行に伴う実費を受けるものとする。又政令の定める手当を受けることができる。

 (委員長)

第二十二条 調停委員会に、委員の互選により委員長を置く。

2 委員長は、委員会の事務を統理し、委員会を代表する。

 (事務局)

第二十三条 調停委員会に、その事務を整理するため、事務局を置く。

 (調停の開始)

第二十四条 調停委員会は、左の各号の一に該当する場合に調停を行う。

 一 関係当事者の双方が調停の申請をしたとき。

 二 関係当事者の一方又は双方が労働協約の定に基いて調停の申請をしたとき。

 三 関係当事者の一方が調停の申請をなし、調停委員会が調停を行う必要があると決議したとき。

 四 調停委員会が職権に基いて調停を行う必要があると決議したとき。

 五 日本国有鉄道の労働関係に関しては運輸大臣又は労働大臣、日本専売公社の労働関係に関しては大蔵大臣又は労働大臣が調停委員会に調停の請求をしたとき。

 (手続及び管理に関する事項)

第二十五条 この章に規定するものの外、調停委員会に関して必要な事項は、政令で定める。

第六章 仲裁

 (公共企業体仲裁委員会)

第二十六条 内閣総理大臣の委嘱する三名の委員をもつて構成する公共企業体仲裁委員会(以下仲裁委員会という。)を設ける。

2 労働組合法の定める中央労働委員会及び船員中央労働委員会の会長(以下推薦委員という。)は、仲裁委員会の委員の候補予定者十二名を選出し、その名簿を公共企業体及びその職員を代表する交渉委員に対し提示する。これらの交渉委員は、仲裁委員会を構成すべき三名の候補者及び同数の補欠候補者を選出し、同意の上、内閣総理大臣に報告しなければならない。

3 前項の同意が三十日以内になされないときは、推薦委員は、自ら三名の候補者及び同数の補欠候補者を決定して内閣総理大臣に報告しなければならない。

4 内閣総理大臣は、第二項又は前項の報告に基いて仲裁委員会の委員を委嘱する。

 (委員の欠格条件)

第二十七条 左の各号の一に該当する者は、仲裁委員会の委員であることができない。

 一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ない者

 二 禁こ以上の刑に処せられた者

 三 国会又は地方公共団体の議会の議員

 四 政党の役員(委嘱の日以前一年の間にその地位にあつた者を含む。)

 五 公共企業体に対し物品の納入又はその工事の請負を業とする者(委嘱の日以前一年の間にこのような地位にあつた者を含む。)

 六 公共企業体の役員及び職員

 (委員の任期)

第二十八条 仲裁委員会の委員の任期は、三年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間その職務を行う。委員は、再任することができる。

 (委員の罷免)

第二十九条 労働大臣又は運輸大臣若しくは大蔵大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、内閣総理大臣に対して委員の罷免を求めることができる。

2 前項の要求があつた場合において、内閣総理大臣は、その要求が妥当であると認めるときは、その委員を罷免して、補欠候補者を委員に委嘱することができる。内閣総理大臣は、その他の理由により、委員が委員たるに適しないと認めるときも、同様の措置をとることができる。

 (委員長)

第三十条 仲裁委員会に、委員の互選により委員長を置く。

2 委員長は、仲裁委員会の事務を統理し、委員会を代表する。

 (事務局)

第三十一条 仲裁委員会に、その事務を整理するため、事務局を置く。

 (規則制定権)

第三十二条 仲裁委員会は、仲裁の手続その他事務処理に関する事項に関し、規則を定めることができる。

 (仲裁の範囲)

第三十三条 本章に定める仲裁手続は、第八条に定める団体交渉の対象たるべき事項であつて、第三章に定める団体交渉手続又は第五章に定める調停手続によつて解決し得ない総ての問題について行われる。仲裁は、労働協約の条項の解釈及び労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十六条の規定による協定に関して生ずる紛争についても行われるものとする。

 (仲裁の開始)

第三十四条 仲裁委員会は、左の各号の一に該当する場合に仲裁を行う。

 一 関係当事者の双方から仲裁委員会に仲裁の申請がなされたとき。

 二 関係当事者の双方又は一方から労働協約の定により仲裁委員会に仲裁の申請がなされたとき。

 三 調停委員会の委員の過半数の決議により、その委員会において調停中の紛争について仲裁委員会に仲裁の請求がなされたとき。

 四 二箇月以内に調停が成立しなかつたとき。

 五 運輸大臣若しくは大蔵大臣又は労働大臣が仲裁委員会に仲裁の請求をしたとき。

 (仲裁委員会の裁定)

第三十五条 仲裁委員会の裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。但し、第十六条に規定する事項について裁定の行われたときは、同条の定めるところによる。

 (仲裁委員会の指示)

第三十六条 仲裁委員会が第五条違反の行為があると決定したときは、その公共企業体に対しその行為の取消を命ずることができる。

 (準用規定)

第三十七条 労働組合法第二十八条から第三十一条まで及び第三十四条から第三十七条まで並びに労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)第三十二条、第三十三条及び第四十三条の規定は、仲裁委員会に関して準用する。

2 この章に規定するものの外、仲裁委員会に関して必要な事項は、政令で定める。

第七章 雑則

 (行政権限)

第三十八条 この法律に特別の定のあるものを除き、この法律の運用及び施行は、労働省がつかさどるものとする。

附 則

1 この法律は、昭和二十四年四月一日から施行する。

2 公共企業体の設立後最初に委嘱された仲裁委員会の委員の任期は、内閣総理大臣の定めるところにより、各一年、二年、三年とする。

3 労働組合法第五条、第六条、第八条及び第十九条第二項に規定する行政官庁の権限並びに同法第十五条に規定する労働委員会の権限は、労働大臣が行う。この場合において、同法第六条及び第八条に定める労働委員会の決議は、要しないものとする。

(大蔵・運輸・労働・内閣総理大臣署名)

法令一覧(年度別)に戻る