国立国会図書館から引用

空襲対策緊急強化要綱

    昭和20年1月19日 閣議決定

     空襲ノ愈々熾烈化セントスル情勢ニ鑑ミ国土防衛ノ一段ノ強化ヲ期シ既定諸方策ヲ完遂徹底スルト共ニ昭和二十年一月十二日閣議決定ニ係ル緊急施策措置ノ一環トシテ左ノ諸施策ヲ緊急ニ実施セントス
    第一、都市疎開ノ強化
    (一)人員疎開ノ強化促進
     帝都其ノ他重要都市ニ於ケル人員疎開ハ老幼者姙婦等ニ重点ヲ置キ更ニ帝都ヨリ百五十万人(其ノ他ノ都市ヲ含メ三百二十万人)ノ地方転出ヲ目途トシ之ガ促進ヲ図ルト共ニ戦時緊要人員ノ転出ヲ抑制セントス
     本件実施ニ当リ受入態勢ニ付一段ノ整理強化ヲ図ルト共ニ疎開残留者ノ生活ヲ確保スル為各職域又ハ地域ニ於ケル合宿ノ設備、下宿業ノ奨励等格段ノ方策ヲ講ズルモノトス
    (二)衣料等ノ分散疎開保全措置ノ強化
     衣料其ノ他生活必需品ノ保全措置ニ関シ之ガ縁故疎開公共団体其ノ他各職域及地域ニ於ケル受託保管竝ニ倉庫業者等ノ業務拡張等ニ付所要ノ便宜ヲ供与シ又ハ助成ヲ加フル等之ガ勧奨指導ヲ強化セントス
     本件実施ニ関聯シ重要都市ニ於ケル堅牢建築物ノ利用統制(後出)ヲ実施シ又重要都市ニ於ケル隣組共同格納庫整備助成ヲ実施セントス
    (三)建物疎開ノ追加実施
     帝都其ノ他重要都市ニ於ケル建物疎開ハ更ニ強力ニ之ヲ実施シ空地帯消防道路水利接近施設簡易貯水槽防空壕等ノ防空施設ノ造成ニ資スルト共ニ特ニ間引疎開ニ依ル空家対策ニ遺憾ナキヲ期シ帝都ニ於テ差当リ十万五千戸(其ノ他ノ地域ヲ含メ二十万戸)ノ疎開ヲ可及的速ニ完了セシムル如ク追加実施セントス
    第二、戦時緊要人員ノ残留確保
     帝都其ノ他重要都市ニ残留ヲ要スル戦時緊要人員ハ其ノ範囲ヲ明定シ之ガ地方転出防止ニ関シ強力ナル指導ヲ加へ職域死守ノ敢闘精神ヲ昂揚セシムルト共ニ所要ニ応ジ防空法又ハ国家総動員法ニ依リ之ガ残留ヲ確保セントス
    第三、堅牢建築物ノ利用統制
     帝都其ノ他重要都市ニ在ル堅牢建築物(地下施設ヲ含ム)ニシテ一定規模以上ノモノニ付其ノ利用ヲ統制シ軍需工場防空施設官公衙其ノ他戦争遂行上重要ナル用途ニ限リ之ヲ使用セシムルコトトシ然ラザル利用者ニ対シテハ強力ナル勧奨ニ依リ又ハ所要ニ応ジ防空法又ハ国家総動員法ヲ発動シテ之ガ転用ヲ図ラントス
    第四、防空消防力ノ強化
    (一)消防機関ノ要員確保
     消防機関ノ完全ナル初動態勢ノ確立ヲ期スル為消防官吏特ニ消防機関要員及警防団消防部員ノ確保充実ニ付万全ノ措置ヲ講ゼントス
    (二)消防器材ノ整備
     焼夷弾ニ対スル隣組初期防火ノ万全ヲ期スル為四大地域等特ニ重要ナル都市ニ在リテハ一隣組ニ対シ小型腕用喞筒一台ノ目標ヲ以テ拡充整備ヲ図ラントス
     更ニ反覆大空襲ニ際シ消防力ノ運用ト相俟ツテ破壊消防ノ充実強化ノ要アリ之ガ為特設消防隊竝ニ警備隊ニ対シ所要破壊器材ノ整備ヲ図ラントス
    第五、防空土木施設ノ追加整備
    (一)消防道路及貯水槽ノ増設
     帝都其ノ他重要都市ニ於テ消防道路延長十五万米ヲ追加整備シ又今後情勢ノ推移ニ応ジ新ニ整備ヲ必要トスル都市ニ於テ小型簡易貯水槽五万個ヲ整備セントス
    (二)横穴式及掩蓋式防空壕ノ増設
     帝都其ノ他重要都市ニ於テ横穴式防空壕十万米及掩蓋式防空壕七万個ヲ増設シ又今後情勢ノ推移ニ応ジ新ニ整備ヲ必要トスル都市ニ於、横穴式防空壕十五万個ヲ整備セントス
     右ノ外帝都ニ於テ重要施設ノ収容人員ノ収容物資ノ貯蔵等ニ充ツベキ隧道式防空施設延長八千五百米ヲ構築セントス
     尚帝都以外ノ重要都市ニ付テモ情勢ノ推移ニ依リ帝都ニ準ジ之ヲ整備スルモノトス
    第六、罹災者対策ノ強化
    (一)罹災者避難及収容計画ノ強化
     罹災者ニ対シテハ罹災地ニ於テ一応仮収容ノ上戦時災害保護法ニ依リ所要ノ応急救助ヲ為シタル後業務ノ関係上罹災地ニ残留スルヲ要スル者ヲ除クノ外努メテ短期間内ニ於テ縁故先又ハ予メ計画準備セル避難先ニ移転セシムベク指導スルモノトシ罹災者ノ収容ニ遺憾ナカラシムル為重要都市ノ存スル都府県ヲシテ空家其ノ他ノ民家ヲ予メ借上ゲ確保シ置カシムルト共ニ罹災地ニ残留ヲ要スル者ニ付テハ空家遊休建物ノ利用斡旋或ハ合宿施設ノ整備等所要ノ措置ヲ講ズルモノトス
    (二)罹災者ニ対スル保護ノ強化
     戦時災害保護法ニ依ル保護費ノ限度引上ゲ竝ニ保護ノ迅速化ヲ図ル為必要ナル措置ヲ講ズルト共ニ各種法外援護事業ヲ実施シ以テ罹災保護ノ徹底強化ヲ図ルモノトス
    (三)防空医療対策ノ強化
     救護所及救護病院ハ防護施設ノ強化ヲ図リ医療救護ニ支障ナカラシムルト共ニ大規模空襲ニ因リ救護所、救護病院、予備救護所等ノ喪失又ハ機能ノ減退アリタル場合ニ於テハ公共団体又ハ日本医療団ニ於テ救護施設ヲ設置シ之ガ要員ハ災害ヲ蒙リタル救護機関ノ要員又ハ応援救護班ヲ活用充当スルモノトス
     尚帝都其ノ他重要都市ニ開設スル救護所、救護病院ハ出来得ル限リ堅牢ナル建物又ハ地下室ニ設置セシムルモノトス
    (四)生活必需物資ノ備蓄、配給ノ整備強化
     (イ) 政府ニ於テ現ニ実施セル生活必需備蓄物資ノ分散防護ノ徹底ヲ促進スルト共ニ出来得ル限リ備蓄物費ノ増強ニ努ムルモノトス
     (ロ) 非常ノ際ニ於ケル物資配給ノ円滑迅速ヲ期スル為機構要員ノ整備確保ヲ図ルモノトス
    第七、其ノ他
    (一)資材ノ割当
     本件実施ニ伴フ資材ニ付テハ現下ノ情勢ニ鑑ミ努メテ早期ニ割当ヲ為スモノトス
    (二)労務ノ確保
     本件実施ニ伴フ労務ニ付テハ之ガ確保ニ関シ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス
    (三)地方団体防空対策費借入金ノ元利補給
     地方防空対策費ニ付テハ事態ノ必要ニ応ジ単ニ直接国庫補助ヲ為スノ方法ノミニ依ルコトナク当該地方団体借入金ニ対スル元利補給ノ方途ヲモ講ジ得ルコトトシ防空対策実施ノ敏活ヲ期スルモノトス
    (四)本件ハ各項目ニ付完成期間ヲ定メ急速実施ヲ図ルモノトス
    備考
     工場ノ分散疎開其ノ他生産防空ニ関シテハ別途策案スルモノトス

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